【書評】『楽園』夕木春央|3部作の掉尾を飾る!極限のクローズドサークル

小説

『方舟』で日本のミステリ界に凄まじい衝撃を与え、『十戒』でその期待を軽々と超えてみせた夕木春央さん。

待望の新約3部作の掉尾(ちょうび)を飾る長編ミステリ『楽園』がついに刊行されました。

前2作をリアルタイムで追いかけてきたファンの一人として、今作もページをめくる手が止まらない強烈な読書体験となりました。

今回は、読了直後の熱量そのままに、本作の魅力や前作との比較、そして「この3部作のすごさ」を徹底的に語り尽くします!

『楽園』の作品概要とあらすじ

脱出の条件は「殺人」?

物語の舞台は、群馬の山奥にある切り立った岩壁に囲まれた、外部から完全に隔絶された秘密めいた空間――通称「楽園」。

主人公の不動産経営者・康之は、失踪した賃借人の行方を追って、恋人の沙織と共にその場所を訪れます。
しかし、足を踏み入れた彼らを待ち受けていたのは、謎の「6人の住人」による拘束でした。

そこで突きつけられたのは、あまりにも理不尽で残酷なルール。

「この場所から脱出したければ、誰か一人を殺さなければならない」

法律も警察も届かない閉ざされた空間で、普通の人間である主人公たちが、殺人という絶対に犯してはならない禁忌と、生き残るための脱出欲求の間で激しく葛藤していくことになります。

『方舟』『十戒』と比べた『楽園』の立ち位置

正直なところ、シリーズ1作目である『方舟』のあの度肝を抜かれるような衝撃は、やはり別格でした。
続く『十戒』も期待を裏切らない見事な出来栄えだったため、3作目となる『楽園』へのハードルはかなり上がっていたはずです。

実際に読んでみると、『方舟』ほどの「ひっくり返される衝撃」そのものはやや抑えめだったかもしれません。
しかし、それを補って余りある圧倒的な「読みごたえ」が今作には詰まっていました。

何よりも、『方舟』『十戒』という前2作をあらかじめ読んでいるからこその楽しみが随所に散りばめられているのが最大のご褒美です。(ネタバレになるので詳しくは言えませんが……!)

3部作すべてを追いかけてきた読者であれば、ニヤリとさせられること間違いなしの構造になっています。

ここがたまらない!極限状態における「リアルな心理描写」

『楽園』の大きな見どころは、「殺人犯にならなければ脱出できない」という狂ったルールの下で描かれる、登場人物たちの生々しい心理描写です。

「すぐに実行できない」からこそのリアリティ

物語を読み進めていくと、この異常な状況に深く納得させられます。しかし、主人公はなかなか行動に移すことができません。

それもそのはず、相手を殺す理由もないのに、自分が生還するために誰かを殺さなければならない――。
そんな極限の状況に放り込まれて、すぐに行動へ移せる人間なんているわけがありません。

何日も先送りにしてしまう主人公の姿には、「もし自分がそこにいたら、間違いなく同じように悩み、足踏みしてしまうだろう」という、妙なリアリティと強い共感を覚えます。

ここ最近のミステリ最高峰!『楽園』がもたらす読書体験の深み

筆者の個人的な意見として、ここ最近のミステリ界において、この『方舟』『十戒』『楽園』の3部作を超えるシリーズはないのではないかと本気で思っています。

  • 単体でも十分に面白い: 『楽園』から手に取っても、上質な密室サバイバル・ミステリとして一気に楽しめます。
  • シリーズで読むと面白さが何倍にも跳ね上がる: やはり『方舟』『十戒』を順に味わった上でたどり着くべき到達点です。

さらに、今作でも前2作と同様に「公式ネタバレサイト」が用意されています。

物語を読み終えたあと、このネタバレサイトを覗き、作者のあとがきとともに結末をじっくりとかみしめる。これがまた格別の時間なんですよね。
すべてを読み終えたあと、「もう一度最初から読み返したい!」と強烈に思わせてくれるのも、このシリーズの恐ろしい魅力です。

まとめ:『楽園』はこんな人におすすめ!

  • 『方舟』『十戒』の新約3部作をここまで追いかけてきたすべてのファン
  • 極限状態での濃密な心理戦や、一気読み必至の閉鎖空間ミステリが好きな人
  • 読んだあとに深い余韻に浸り、考察や読み返しを楽しみたい人

『楽園』単体でも、そして3部作の総決算としても、期待を裏切らない満足感を味わえること間違いなしの一冊です。

気になっている方は、ぜひ前情報なしで、この『楽園』という名の罠に足を踏み入れてみてください!

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