【書評】『多類婚姻譚』凪良ゆう|現代の結婚観と多様性のリアルに迫る傑作短編集

小説

今回ご紹介するのは、本屋大賞受賞作家・凪良ゆうさんの最新作『多類婚姻譚』です。

結論からお伝えすると、本作は「いまの日本で生きる私たち全員に刺さる、圧倒的なリアリティと読みやすさを両立した傑作」でした!

結婚、家族、そして多様性——。
誰もが一度は悩んだことのあるテーマが、ギュッと凝縮されています。
ネタバレなしでその魅力をたっぷりお伝えしますので、ぜひ最後までお付き合いください!

『多類婚姻譚』の概要とざっくりあらすじ

まずは作品の基本情報と、大まかなストーリーについてご紹介します。

作品概要

  • 著者:凪良ゆう
  • タイトル:『多類婚姻譚』
  • 形式:連作短編集(全5話)

ざっくりあらすじ

物語の舞台は、とある大手食品会社。

ここで働く社員やその周囲の人々を主人公に、少しずつ重なり合い、ゆるやかにつながっていく5つの物語からなる連作短編集です。

恋人との入籍を控えたカップル、家族の期待と自分の生き方との間で揺れる人、世代による価値観のズレに悩む人など……。
それぞれの立場から「誰かと一緒に生きること=結婚・家族」についての葛藤や模索が描かれます。

重厚なテーマを扱いつつも、ページをめくる手が止まらなくなる疾走感があり、短編集だからこそサクサク読めるのも大きな魅力です!

『多類婚姻譚』深掘り

ここからは、私が実際に読んで心に深く残ったポイントを3つの視点から深掘りしていきます。

昭和から令和へ。「結婚観」の大きな変化を痛感

本作を読んで一番に感じたのは、「結婚に対する考え方が昭和の時代から本当に大きく変わったんだな」という強烈な実感です。

かつては「一定の年齢になったら結婚するのが当たり前」という空気が社会全体にありました。
しかし現代では、生き方や幸せの形が多様化しています。

  • 「結婚する・しない」は個人の自由
  • パートナーシップのあり方も一つではない
  • 従来の「家」や「性別」にとらわれない関係性

物語の中で描かれる登場人物たちの葛藤を見ていると、現代社会が抱える「生き方の変化」が浮き彫りになり、思わず何度も頷いてしまいました。

「多様性」は広まったけれど……まだまだ残る現実の壁

近年、「多様性(ダイバーシティ)」という言葉を日常的に耳にするようになりました。
しかし、この本は「言葉だけが一人歩きしていて、本当の意味での理解や浸透はまだまだ追いついていないのでは?」という鋭い問いを投げかけてきます。

表向きは理解を示しているつもりでも、ふとした言動に滲み出る無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)。

相手を想うからこそ生じる「正しさの押し付け」や「すれ違い」など、悪意がないからこそ根深い問題が、凪良ゆうさんの繊細な文章によって生々しく描き出されています。

「多様性を認める」と言うのは簡単だけれど、実際に多様な価値観と向き合って生きることは決して綺麗事だけではない——
そんな現実を深く考えさせられました。

経済的な悩みと「いまの日本」で生きる息苦しさ

もう一つ、本作を読んで強く胸に刺さったのが経済的なリアリティです。

「結婚したい」「子どもがほしい」と願っても、物価高や雇用不安、将来への経済的な懸念から、一歩を踏みとどまざるを得ない現代日本の空気感。
特に今の若者世代が直面している切実な状況が、物語の端々からリアルに伝わってきます。

制度や意識の問題だけでなく、「経済的なハードルが結婚や出産の選択肢を狭めている」という日本の現状は、決して他人事ではありません。

だからこそ、物語の中の出来事がどこか遠い世界のフィクションではなく、「今の自分の隣にある物語」として響いてくるのだと感じます。

まとめ:『多類婚姻譚』はどんな人におすすめ?

『多類婚姻譚』は、現代社会の歪みや生きづらさを鋭く捉えながらも、最後には「不完全な私たちがどうやって歩んでいくか」という小さな光を見せてくれる素晴らしい作品でした。

テーマは重厚ですが、圧倒的に読みやすく、小説としての面白さが抜群です!

こんな人にぜひ読んでほしい!

  • 次に読む本を探している小説好きな方
  • 現代の人間ドラマやリアリティのある物語が好きな方
  • 結婚・家族・生き方についてじっくり考えてみたい方
  • 凪良ゆうさんの描く繊細な感情描写が大好きな方

「人はなぜ誰かと繋がろうとするのか」「自分にとっての幸せとは何か」を改めて見つめ直すきっかけをくれる一冊です。気になった方は、ぜひ手に取ってみてくださいね!

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