最近、X(旧Twitter)などのSNSのタイムライン(TL)を眺めていると、やたらと見かける「ある小説」の表紙がありませんか?
そう、硝子で作られた奇妙な塔が描かれたあの本。
知念実希人先生の『硝子の塔の殺人』です。
あまりにもTLで見かける頻度が高いので、「これは読まねば…!」と謎の使命感に駆られてページをめくったのですが……。
なるほど、これはタイムラインで大騒ぎされるわけだ。
読み終えた今、猛烈に納得しています。今回は、この『硝子の塔の殺人』がなぜこれほどまでに多くの読者を熱狂させているのか、その理由を私の感想を交えながら熱く語っていきたいと思います。
もちろん、肝心な謎の真相や犯人などのネタバレは一切ありませんので、未読の方も安心して最後までお付き合いください!
そもそも『硝子の塔の殺人』ってどんな話?
まずは、本作の基本的なあらすじからご紹介します。
【あらすじ】
地上11階、地下1階。雪深き森にそびえ立つ、美しく奇妙な「硝子の塔」。
この館の主人である高名な臨床心理士・神津島太郎に招かれたのは、医師、警察官、小説家、霊能力者など、一癖も二癖もあるゲストたち。
そしてもう一人、名探偵・碧月夜(あおい つきよ)と、その助手となった医師・一条遊馬(いちじょう ゆうま)。
この閉ざされた「硝子の塔」で、恐るべき連続殺人事件の幕が上がる。
館の主人が毒殺されたのを皮切りに、凄惨な殺人が連鎖していく。
果たして、犯人は誰なのか? 名探偵・月夜は、この美しき塔に隠された謎を解き明かすことができるのか――。
あらすじを読んだだけで、ミステリー好きなら思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。
「雪の山荘」「奇妙な建築物」「クローズド・サークル(孤立した空間)」「名探偵と助手」。
まさに、本格ミステリーの王道をこれでもかと詰め込んだ設定になっています。
理由がわかった。これは「ミステリマニアに向けたミステリ」だ!
本作を一言で表現するなら、「ミステリマニアに向けた、究極のミステリ」。これに尽きます。
作中、とにかくこれまでのミステリーの歴史、いわゆる「古典名作」や「新本格ミステリー」へのオマージュとリスペクトが爆発しているんです。
エドガー・アラン・ポー、コナン・ドイル、アガサ・クリスティといった黄金期の作家たちから、日本の新本格ムーブメントを巻き起こした綾辻行人先生(『十角館の殺人』など)へのリスペクトが、ストーリーの端々から溢れ出ています。
特に、名探偵・碧月夜のキャラクターが強烈。
彼女は重度の「ミステリマニア」であり、事件が起きている最中にもかかわらず、過去の名作のトリックや定番の展開を引き合いに出して語りまくります。
- 「これは〇〇(名作のタイトル)へのオマージュですね!」
- 「クローズド・サークルで最初に死ぬのは……」
といったセリフが飛び出すたびに、ミステリー好きなら「あるある!」と嬉しくなってしまうはず。
知念実希人先生といえば、医療ミステリーの旗手として有名ですが、本作に関しては「知念先生、本当にミステリーが好きなんだな……!」という熱量が読者にダイレクトに伝わってきます。
この圧倒的な熱量こそが、SNSのタイムラインで頻繁に口コミとして拡散されていた理由なのだと、読んで強く実感しました。
【ここが最高】「ん? ちょっと荒くない?」からの、見事すぎる裏切り
ここからは、私が読んでいて一番興奮したポイントについてお話しさせてください。
物語の中盤から終盤にかけて、事件の謎解きが始まります。
名探偵によって鮮やかにトリックが明かされていく……はずなのですが、私は正直、読んでいて少しだけ違和感を覚えました。
「あれ? トリックのロジックが、知念先生の他の作品に比べて、若干荒くないか……?」
「名探偵の推理としては、ちょっと強引な気がする……」
そんな風に、少しだけ物足りなさを感じてしまったんです。
さらに、本の厚みをふと確認したとき、決定的なおかしさに気づきました。
「……いや、待って。この推理で事件解決だとしたら、残りのページ数、多すぎない!?」
ミステリーを読み慣れている人なら分かってもらえると思うのですが、「残りのページ数」というのは最大のヒントであり、時に最大のノイズになります。
「ここで事件が解決するはずがない、だってあと150ページもあるんだから!」というアレです。
「この違和感は一体何なんだろう?」「まさかプロットのミス……?」 そんな失礼なことを一瞬でも考えてしまった私を、知念先生は全力で殴りにきました。
ここからの展開が、本当に凄かった。
「若干荒いトリックだな」「残りのページ数がおかしいな」という読者の違和感すらも、すべて著者の計算通り。手のひらの上で完全に転がされていたのです。
そこから物語は急転直下、想像もしていなかった方向へと爆走し始めます。
まさに「ちゃんと裏切ってくれた!」という極上の快感。
私たちが「おや?」と思ったその違和感こそが、次の巨大なドミノを倒すための引き金だったのです。この、綺麗に騙される快感、そして読者の裏をかく二重三重の仕掛けには、思わず本を閉じたあと「面白かったな……」とため息が漏れてしまいました。
ミステリー初心者でも楽しめる?
ここまで「ミステリマニア向け」と強調してきましたが、「じゃあ、普段あまりミステリーを読まない人は楽しめないの?」と思われるかもしれません。
結論から言うと、全く問題なく楽しめます!
むしろ、過去の名作のパターンや定番の約束事が作中で丁寧に説明されるため、「本格ミステリーってこういうものなんだ!」という入門書としても最適です。
知念先生の文章は非常に読みやすく、テンポが良いので、分厚いページ数(単行本で約500ページ)をまったく感じさせません。
「硝子の塔」という視覚的にも美しい舞台設定も相まって、まるで上質なエンターテインメント映画を観ているような感覚でサクサク読み進められます。
そして、ミステリー初心者であればあるほど、終盤の「大逆転」の衝撃は凄まじいものになるはずです。
まとめ
『硝子の塔の殺人』は、SNSでの盛り上がり通り、いや、それ以上のエネルギーを持った傑作でした。
- 王道の本格ミステリーが好きな人
- 「ページ数」を計算しながら読む、目の肥えた読者
- とにかく度肝を抜かれるどんでん返しが読みたい人
これらに一つでも当てはまるなら、今すぐ本屋に走るか、電子書籍をダウンロードすることを強くおすすめします。
読者の「先を読みたい」「裏をかきたい」というプライドを、これほどまでに美しく、そして完璧に裏切ってくれる作品には滅多に出会えません。
あなたもぜひ、この美しき「硝子の塔」に迷い込み、知念実希人先生が仕掛けた最高の罠にかかってみてください!


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